三重の鳥の中から2013年8月31日現在の三重県におけるシギ・チドリ類の記録と
松阪市曾原大池(ボラ池)で2012年に繁殖したセイタカシギの繁殖生態を選びました。



ご存知のように三重県は南北に細長い縦長の県で東側は北から南まで海に面しています。
志摩半島から北側は伊勢湾に南側は太平洋に面し、山あり 内湾あり 外洋ありで、
野山の鳥から内湾の水鳥、外洋の水鳥まで多様な鳥が見られる環境があります。

私は津市と松阪市の間を流れる雲出川の河口近くに住んでおり、
近辺の水鳥、なかでもシギ・チドリ類をメインにほぼ毎日10年ほど観察を続けてきました。

雲出川から北の津市方面は砂浜海岸と砂質の強い干潟が点在し、
南の松阪方面は砂泥質の広大な干潟が干潮時に現れます。

雲出川河口を挟んで北と南で環境が異なるところから津市と松阪市では
飛来する鳥が少し違ってきますが冬には多くのカモメ類、カモ類が越冬に訪れ、
渡りの季節にはシギ・チドリ類の休息の場所・餌場となっております。

どれほどのシギ・チドリ類が雲出川河口を中心とした三重県で見られたのかと言うと。



シギ・チドリ類は世界で216種、日本で78種が記録されています。
これはバーダー2013年4月号の記事を参考にしました。

日本の記録は私の集計でも78種になりました。三重の記録は64種です。
日本で記録された78種の実に82%にあたるシギ・チドリ類が三重県で記録されています。
国内でも有数のシギ・チドリの飛来県であると言えるでしょう。



三重の記録64種の内訳です。三重の記録は日本の記録78種に14種届きません。



日本に記録があって三重に記録のない14種です。拾い出してみると珍種ばかりです。
また類似種との識別が難しいものが多いです。飛来があったとしても見逃す可能性があります。

ヨーロッパムナグロはムナグロより大きく翼下面が白い。
コシジロウズラシギは上尾筒が白く胸の縦斑が脇まで続く、初列風切が尾羽より突出しているなど
これら14種の特徴の一部だけでも把握しておけば野外で遭遇した時に見逃さずに済むかも知れません。



三重で冬季に見られた24種です。最も越冬数が多いのはハマシギで2000羽以上、
ついでミユビシギが300〜500羽と推測しますが
三重県の海岸線は長く正確なカウントはできません。あくまで推定数です。

ミヤコドリは野鳥の会三重の有志によって毎年カウント調査をしていますが
5年前から50羽を超えるようになりました。
2012年は104羽を数えましたが2013年はなぜか54羽に半減しました。
これまでに越冬数が100羽を超えたのは2012年だけです。



三重県で繁殖が見られる7種のうち、コチドリ、イカルチドリ、シロチドリ、ケリは 繁殖数が多く
タマシギも多くはありませんが毎年繁殖が見られます。

セイタカシギは近年三重でも繁殖が見られるようになりましたが失敗が多く繁殖成功はこれまで4度しかありません。
ツバメチドリは2005年に津市で繁殖したと聞いていますが観察されたのはその一度だけです。
イソシギも繁殖してるはずなのですが巣など証拠になるものを確認できていません。

画像は私が撮影できた雛たちです。  ↓大きな画像で見てみます。

なお撮影は車内から望遠800ミリで親鳥が育雛を放棄しないよう、
雛にストレスを与えないよう細心の注意を払いました。
撮影後も画像の雛たちは順調に成長し繁殖場所を離れて行きました。



タマシギ親子です。 タマシギは孵化して1週間ほどの間、おねだりする雛に親が口移しで餌を与えます。
シギ・チドリ類では非常に珍しいと思います。
少なくとも三重で見られる他のシギ・チドリ類でこうした行為は見られません。

以前イカルチドリの親鳥がミミズを捕らえてきて
雛が見つけられるように雛の3・4mほど前に落としたことがありましたが。
親が口移しで餌を与えるようなことはしません。

タマシギの♀は4個の卵を産み終えると産卵から育雛まで♂にまかせて去って行きます。
近郊のシギ・チドリ類の繁殖を観察していると タマシギとセイタカシギの繁殖生態がとても興味深いです。

セイタカシギのつがいです。セイタカシギはつがいの絆を維持するために繁殖期外でも交尾します。
左の画像は繁殖期外の10月1日の交尾です。2011年と2013年に産卵途上で交尾したつがいも見られました。

右の画像は若鳥同士のペアです。四日市市と松阪市で繁殖が成功した4組のうち
2組のペアは♂は成鳥でしたが♀は前年生まれの若鳥でした。

♀若鳥は繁殖に関わるが♂が若鳥の場合も繁殖に関わるのかどうか分からなかったのですが
2010年5月9日に交尾したつがいは雌雄とも次列風切先端が白い若鳥でした。
そのつがいは営巣をみることなく居なくなりましたがセイタカシギは雌雄とも1年目で繁殖に入ると考えられます。

それでは2012年の松阪市曾原大池のセイタカシギの繁殖を雛の成長過程に視点を合わせ見ていきます。
     
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