セイタカシギ 繁殖 松坂市曽原大池(2012年)

松阪市曾原大池は五主海岸から三渡川河口に至る後背地の湿地の一つで
カモ類やサギ類、シギ・チドリが飛来します。セイタカシギも年中見られます。

三重県におけるセイタカシギの繁殖は
四日市市で 2008年と2009年に記録されていますが
鈴鹿市以南で繁殖成功の記録はなく今回の曽原大池が初となります。

2012年6月19日の台風。その数日後に4つがいが曽原大池に飛来し
50~70mの間隔を開けて3つがいが巣作りを始めました。

1巣は産卵途中で卵を何者かに捕食され繁殖に失敗しましたが
無事4個の卵を産み終えた2巣では7月2日から抱卵を始めました。

抱卵から数日後に1巣で卵を何者かに捕食されました。
当池でタヌキと蛇が見られています。

繁殖に成功した1巣は4卵で、7月25日PM2時に1個目が孵化し
2時間後のPM4時に2個目が孵化しました。

2012年7月25日 16時30分  ♂親と2羽の雛



25日PM:2時に1羽目、PM::4時に2羽目の雛が孵化しました
26日AM:5時に3羽目。
27日AM:5:時に4羽目の雛が確認されています。
3日間かけて4羽の雛が誕生しました。

4羽目の雛が見られたAM5時に卵の殻を数メートル先の水面に捨てた親鳥が
目撃されているから孵化して間もなかったのだろう。


↓ 2012年7月27日 17時44分 ♀親と歩く4羽の雛
早く孵化した雛は3日目になりますが
遅く孵化した雛は孵化当日に歩いたことになります



2012年7月27日 ♀親の懐に入り暖をとる雛


巣作りを始めた頃、当池にはカルガモが20羽ほどいましたが
執拗な親鳥の威嚇によってカルガモは他に移動しました。
産卵から育雛の間はサギ類やカラスにも威嚇攻撃を続けていた。

2012年7月27日 アオサギを威嚇攻撃する親鳥



7月から8月中旬はシギ・チドリの渡りの時期になり当池にも飛来します。
アオアシシギやキアシシギ、ソリハシシギ、小さなコチドリやイソシギさえ追い払ってしまう。
シギ・チドリの貴重な湿地である当池にシギ・チドリが飛来できない状況が続いていました。
育雛は1ヶ月は続く、8月下旬頃まで曽原大池は このセイタカシギの縄張り状態が続くのだろう。


4個目の卵が孵化したのは7月27日、早朝4羽が確認されている。
27日夕刻に親鳥の誘導で4羽の雛が泳ぐ姿を確認できました。
生まれたその日に雛は泳げるのだ。感動!

2012年7月27日 5時42分 泳ぐ4羽の雛



葦原から葦原を泳いで行き来する4羽の雛が一日に1~2回見られました。
夕刻になると巣から40mほど離れた葦原の先端部に泳ぎ移動します。

翌早朝観察では同場所で雛が見られることからねぐらを一定の場所に決めている。
雛は一日一日たくましく成長している。

当記事を書いているのは4羽目の雛が誕生した孵化日から20日目です。
後10日ほどで飛べるようになるだろう。

セイタカシギは昨年も1昨年も当池で営巣しましたがいずれも大雨よる増水で失敗に終わっています。
8月11日の午前に集中豪雨があり、池の水位が上がり
巣は水没しましたが雛は孵化後15日経っており今回は運よく水難を免れました。
抱卵中でなかったのが幸運でした。

松阪市におけるセイタカシギの繁殖成功を記録できたのは今回が初めて。
鈴鹿市以南の繁殖成功は貴重な出来事でした。

2012年7月31日、孵化日に3日のずれはありますが
早く生まれた雛、遅く生まれた雛の個体識別は出来なかった。

2012年7月31日


雛が葦原に入ると親鳥は上空から探し、葦原から出るように呼びかけます。
葦原の中では外敵から雛を守れないからだろう。

2012年7月31日 葦原の中の雛に呼びかける親鳥

2012年7月31日

2012年8月2日 葦原から巣に泳ぎ渡り くつろぐ雛


2012年8月3日  雛の足の太さが目立つ


2012年8月7日 日に日にたくましくなってくる


2012年8月8日


翼が伸長してきました。羽をばたつかせて飛び上がろうとしますが
5・6m移動は出来てもまだ空中に体を浮かせて飛ぶことはできない。

2012年8月16日 



嘴を泥中や水中に突っ込んで餌を捕っていましたが
何を食べているのかは分からなかった。
生まれて20日目、雛は魚をなんども捕食した。ハゼの幼魚だと思います。

2012年8月16日


2012年8月18日 生まれて22日目

2012年8月18日

2012年8月18日 採餌などで疲れると巣に戻って休息することが多い。

翼が一日一日伸長している。数日後の飛ぶ姿が目に浮かんでくる。
2012年8月19日 生まれて23日目

2012年8月19日

2012年8月19日

セイタカファミリーが縄張りを張る池にホウロクシギが1羽下りたった。
今まで当池に飛来するすべてのシギを威嚇し追いはらっていたが
ホウロクシギの横で子供が歩いていても親鳥は素知らぬ顔。
子供の成長を親も認めたということだろう。
親鳥の攻撃によって全てのシギが撃退され
当池にシギが入れない状態が続いていましたが
雛の成長によってシギ・チが飛来できる環境がようやく整いつつある。

2012年8月20日 生まれて24日目 他の鳥を追い払わなくなった親鳥。

2012年8月20日

2012年8月20日

2012年8月21日 生まれて25日目

2012年8月21日

2012年8月21日

雛という呼び名が合わなくなりました。幼鳥と言うべきでしょうか。
自由に飛べるのも間近に迫ってきた。翼がしっかりしてきた。
1羽の子供は10mほど飛びました。

2012年8月22日 生まれて26日目

2012年8月22日

2012年8月22日

2012年8月23日 生まれて27日目 巣に戻り休息する雛。

夕刻になると毎日決まったねぐらに向かう雛が見られる。
2012年8月23日

2012年8月24日 生まれて28日目

2012年8月24日

2012年8月24日

生まれて30日目
雛の飛翔写真は撮れなかったが40~50m飛んだ。

とまりものの写真を見ても初列風切が最も体の後ろに出るほど伸びてきた。


画像は飛来してきたセイタカの群れを警戒する♂親(手前の1羽)
威嚇攻撃を繰り返していました。

2012年8月26日 他種への威嚇行動は見なくなったが同種への警戒は強いです。

子供4個体とも、50-100m飛ぶところを確認できました。
7月25日に生まれた雛は34日経っていますが、7月27日に孵化した雛では32日目です。

2012年8月28日 生まれて32日目

2012年8月28日

2012年8月28日

2012年8月29日 生まれて33日目

2012年8月29日

2012年8月29日

2012年8月30日 生まれて34日目

そばを通るタカブシギを珍しそうに見つめる雛鳥
2012年8月30日

2012年8月31日 生まれて35日目

2012年8月31日

2012年9月1日 生まれて36日目 雛を見守る♀親

2012年9月1日

2012年9月1日

2012年9月26日 生まれて61日目
ファミリーは曽原大池から移動することなく滞在している。

2012年9月26日 生まれて61日目 両親と子供4羽。

立派な幼鳥になりました。
2羽の雛は親から離れ、この日以降姿を見なくなりました。

2012年10月5日 生まれて70日目
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